交通事故によるむち打ち等の後遺障害等級の認定・等級・慰謝料の金額
後遺障害等級の認定・等級・慰謝料の金額
後遺障害
総括
・後遺障害というのは、ケガが回復した際に身体に残存する障害のあること。
・後遺障害の認定においては医師が発行する「後遺障害診断書」が必要になる。
・むちうち症が原因の後遺障害は12級13号、14級9号にあたる。
・後遺障害として認定されると、逸失利益と慰謝料が損害賠償として請求が認められる。
・後遺障害認定、等級認定に不服があるケースは、異議申し立てをし、訴訟提起が可能である。
後遺障害
後遺障害というのは何だと考えますか?
自賠責保険制度でしたら「傷害が治ったとき身体に存する障害」(自賠責法施行令2条1項2号)の事を後遺障害としているのです。
要するに交通事故が理由のケガの治療の終わりの際において、医学上治療を続けても将来的にケガの治癒の確率の無い状態のとき、身体に残っている障害を後遺障害といいます。
後遺障害の損害賠償
(1)後遺障害診断書が必須
後遺症が残存しているなら、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。
この医師が発行する後遺障害診断書をもとに、後遺障害に当てはまるか当たらないか、あてはまる時に後遺障害のレベルがどれぐらいかを損害保険料率算出機構または自賠責保険調査事務所で評価されます。
「後遺障害診断書」がなければ、身体に障害が残存していても「後遺障害」の損害賠償は認められないです。
(2)自賠責から支払われる賠償金
自賠責保険から支払われる後遺障害の賠償金については
逸失利益(後遺症が残らなければ得られた収入)+慰謝料
となってきます。
むち打ちの後遺障害というケース
(1)むち打ち症
むち打ちについては
・外傷性頸部症候群
・外傷性頸椎症
・頸椎捻挫
・頸部挫傷
等といった傷病名、診断名が付けられております。
(2)むち打ち症の愁訴
頸部痛 項部痛、頸部の不快感、上肢の痺れ感や脱力感、背部痛、頭痛、眩暈、吐き気等といった多様な神経症状を訴えます。
(3)むち打ち症の後遺障害の取り扱い
むち打ち症は、上記で述べたような神経症状を訴えるものになります。
そのことから、神経障害の中で局部の神経系統の障害として扱われます。
後遺障害等級表においての等級は
・12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
・14級9号 局部に神経症状を残すもの
として認められるケースが多いみたいです。
※なお、背骨の変形などが確認できるケースは7級または9級に当てはまります。
(4)12級13号と14級9号の違い
12級13号と14級9号の違いは、12級13号よりも症状が軽いものが14級9号と認定されます。
その違いの判断は12級13号と判断されるときは、
・障害の存在が医学的に証明されるものに該当するときです。
例えば画像所見や異常所見がある場合が12級13号となってきます。
14級9号に該当するときケースだと、
・障害の存在が医学的に説明可能なもの
・障害の存在を医学的に証明できなくても自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定できるもの
に該当するときです。
むち打ち症について自覚症状のみだったケースでは、後遺障害の認定そのものが難しいものと言えます。
むち打ち症の後遺障害賠償金
むち打ち症で得られる後遺障害に基づく損害賠償は、逸失利益と慰謝料となっています。
(1)後遺症による逸失利益
後遺症による逸失利益は下の式で算定します。
収入額(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息係数
・収入額(年収)は事故前年の収入額(年収)になります。
幼児、高齢者、主婦など収入額(年収)が困難な人は、賃金センサスの「男女全年齢平均賃金」に基づいた額で算定します。
・労働能力喪失率というのは、事故の後遺症が原因となった労働能力の低下率を数値化したものになります。
12級13号の場合 14%
14級9号の場合 5%
・労働能力喪失期間に対応する中間利息係数
労働能力喪失期間は
67歳-症状固定時の年齢
でだしていきます。
ただし、むち打ち症のケースでは
12級13号、14級9号であっても被害者は受傷前の職務に復帰できます。
だから、裁判例で労働能力喪失期間を
12級13号の場合 5~10年
14級9号の場合 5年
とされる例がほとんどです。
中間利息係数は、将来の損害を請求時に求めるので中間利息を差し引くために使用します。
複利計算で中間利息を控除するライプニッツ係数または単利計算で1年ごとの中間利息を控除する新ホフマン係数のどちらかを使用します。
例 年収400万円の35歳男性がむち打ち症で14級9号に該当した場合の逸失絵利益は
4,000,000×0.05×4.3295※=865,900円
※労働能力喪失期間5年のライプニッツ係数となるのです。
(2)後遺障害の慰謝料
自賠責保険の基準でしたら、
・12級13号 93万円
・14級9号 32万円
というものになります。
この後遺障害の慰謝料というのは、入通院の慰謝料とは別のものになります。
後遺障害の認定に納得していないときは
むち打ち症で身体に障害が残存したにも関わらず、
・後遺障害認定されなかった
・認定された等級に納得していない
というケースでは
後遺障害の認定が損害保険料率算出機構または自賠責保険調査事務所でなされたケースでは、異議申し立てをすることが可能です。
また訴訟提起により、後遺障害認定、上位等級の認定がされることもあります。